山上容疑者


◆山上容疑者をテーマにした異色作

 7月8日に発生した安倍晋三元首相銃撃事件から2ヶ月。9月27日に予定される国葬に向け世論は二分されている。そのさなか、人知れず一本の映画が制作されている。タイトルは『REVOLUTION+1』(監督・足立正生)。描かれるのは、安倍元首相を暗殺した山上徹也容疑者である。この映画がクランクインしたのは8月末。数週間で編集を終え国葬前日に先行上映、国葬当日には各地のミニシアターで限定上映するスピード感を持った作品。そして、監督は「元テロリスト」である。

 足立は日大芸術学部の学生だった1966年に『堕胎』で商業映画監督デビュー。その後、ピンク映画の巨匠・若松孝二が設立した若松プロダクションに参加。若松の監督作『ゆけゆけ二度目の処女(1969年)』や大島渚の『新宿泥棒日記(1968年)』などの脚本を執筆したほか、監督としては『女学生ゲリラ1969年)』などのピンク映画を多く手がけた。そして、1971年にカンヌ映画祭の帰途で若松と共にパレスチナに入り『赤軍‐PFLP 世界戦争宣言』を制作して以来、公安筋からマークされるようになった。時には一ダースもの尾行がついたこともあったという足立は1974年に出国し日本赤軍に合流。その後、若松が『キスより簡単(1989年)』などでメジャー作へ進出する一方で、足立は行方をくらまし「テロリスト」として20年あまりに渡って国際指名手配され続けた。

 足立が再び姿を現したのは、1997年レバノンでの逮捕・収監を経て2000年に日本へ強制送還されてから。それから20年あまりで監督作は『幽閉者 テロリスト2007年)』と『断食芸人(2016年)』のわずかに2本。かつての多作ぶりには及びもしない。『REVOLUTION+1』は実に6年ぶりの監督作品である。

◆安倍元首相の国葬当日に上映

 筆者は、まだ風俗誌の仕事がメインだった、駆け出しのころに、週刊誌の取材で釈放されたばかりの足立にインタビューしてから、付き合いが続いている。時折、酒を飲むと衝撃を受ける話が飛び出すこともあるが、核心部分は語らない。

 そんな人物が山上をテーマに新作を準備している。それも、国葬当日に上映するために。ある関係者から、その情報を得たのは7月下旬のことだった。話を聞きたいと足立に電話をすると会って話すことになった。ロフトの関係者を伴って新宿の喫茶店「珈琲タイムス」に出向くと、足立は紫煙のたちこめる店内で制作スタッフとロケハンを終え打ち合わせの真っ最中であった。すでにスタンバイは完了していた。取材はシャットダウンして撮影するというが、頼み込んで許可を得た。そのかわり足立から提案され、資料提供と難航する出演者の交渉や手配、さらに製作側からの依頼でメイキングの撮影もすることになった。
 
 現場には並々ならぬ緊張感があった。カメラを回すのは金子修介三谷幸喜監督作にも名を連ねる撮影監督の高間賢治。高間はしじゅう怒気のこもった声でスタッフを叱咤していた。足立は出演者に「このシーンはこう」と説明し「キミならどう演じる」と問いかけ、細かく演出をつけていた。

 現場のことも記したい出来事は多いが、国葬当日の先行上映まで一週間を切った現在、現場の様子は一旦保留しておこう。いま、この映画を取り巻く状況は、こうだ。

 26日の新宿のトークライブハウスロフトプラスワン、27日国葬当日の渋谷のLOFT9 Shibuyaでの先行上映は、チケットが2時間で完売。各地のミニシアターでは急遽1日限定の上映を告知するところもある。一方でSNSには「テロリストがテロを賛美する映画を」と語られているのも事実である。



◆「山上がやったことはテロじゃない」

 いったいどんな映画に仕上がっているのか。9月21日の日中、足立の取材ができると連絡を受けてロフトプラスワンを訪れたところ、ラッシュをみることができた。ラッシュとは、まだ未完成の映像のことだが、筆者がみたラッシュは先行上映で用いるものだった。上映時間は50分。ここでは、上映後の幾人かの取材者を前にした、足立の言葉を筆者の取材メモから紹介したい。

「山上がやったことはテロじゃない。個人の決意をいつからテロと呼ぶようになったのだろう……」

 これが「やはり、テロリストがテロを賛美する映画をつくったのではないか」という疑念に対する足立の回答だ。さらに、足立は続ける。

「私が山上を尊敬するといえばテロを尊敬すると受け止められるかも知れないが、そうではない。日々の生活の中では誰もが、山上と同じようなことを考えたことがあるはずだ。しかし、計画したり実際に行動する人はいない。それを山上は実行に移した。もちろん人を殺したのは悪い。ほかに方法もあっただろう。だったら、山上の中にあるものを一緒に見つめてみようと考えたのが、この映画なんだ」

 そして、映画の中に出てくる様々な言葉について、こうも語った。

「山上は私みたいに酒や煙草でごまかすようなことをしなかった。そして行動に移した。行動する、しないの落差を埋めるものとはなんだろうと考えた。だから、映画に出てくるセリフはみんな私自身の言葉なんだ」

◆「もう暴力は世間にはお呼びじゃない」

 取材者には足立に政治的な見解を求める声もあった。その質問に答える中で、足立はこう切り出した。

「革命を目指して老人は敗北した。もう暴力は世間にはお呼びじゃない」と、率直に語る。ならば、いまの方法はなにかといえば「手垢にまみれ、どうしようもないものと思われている<連帯>しかない」と。

 取材中、足立は時折ユーモアも交えた。常々足立は「職業は国家公務員だ」と話している。

「今は生活保護を貰って生きている」と、日々の生活を語るときだ。足立は福祉事務所で「これは私の権利だから生活保護を貰いたい」と主張したら「あなたの主張は正しい」と認められた。ところが対応した福祉事務所の職員は、こういったそうだ。

「あなたは国から保護費を貰っている国家公務員だというが、生活保護費は地方自治体の予算から出ているんですよ」

 煙草を飲みながら、足立はこうオチをつけた。

「だから、地方公務員風に生きているといえば、間違いじゃない」

 クランクインから僅かな期間で、上映を実現することに対して、足立は「映画なんか1ヶ月もあればできる、若松プロでは、そうやってた」という。酒と煙草を手に健康でユーモアたっぷりに暮らしていると、いざという時に動き出す瞬発力も持てるのだろうか。

 ユーモアといえば、足立はこんな言葉も。

「国葬当日は、なにか意思表示にいこうと思っているんだけど、捕まるかもしれないからと、みんなに止められているんだ……」

テロリスト」「日本赤軍」「前科者」といった色眼鏡では見えてこない、言葉であった。<取材・文/昼間たかし

【昼間たかし
ルポライター1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

撮影風景


(出典 news.nicovideo.jp)


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山上容疑者に支援金100万円超 事件正当化に識者警鐘 安倍氏銃撃2カ月


山上容疑者に支援金100万円超 事件正当化に識者警鐘 安倍氏銃撃2カ月
元首相が銃撃され死亡した事件で、無職山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検、鑑定留置中=に対し、全国から100万円を超える現金が差し入れられていることが、関係者への取材で分かった。

事件は8日で発生から2カ月。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に家庭を壊されたと主張する同容疑者を支援する動きについて、識者は「事件の正当化につながりかねない」と警鐘を鳴らす。

事件は7月8日午前11時半ごろ発生。銃撃後に現行犯逮捕された山上容疑者は、母親が入信する旧統一教会への恨みを述べ、「安倍氏が(旧統一教会と)つながりがあると思って狙った」と動機を説明した。

奈良地検は山上容疑者の刑事責任能力の有無を調べるため、大阪拘置所(大阪市都島区)での鑑定留置を続けている。関係者によると、拘置所には現金書留での100万円を超える現金や、衣類、食料品、漫画本の差し入れが寄せられている。収容し切れず、一部は弁護人を通じて親族宅に届けられたという。

ネット署名サイトの「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」では、山上容疑者の減刑を嘆願する活動が続き、7900筆を超える署名が集まっている。「事件に至る心情に同情を禁じ得ない」「彼は被害者だ」などというコメントも目立つ。

【日時】2022年09月08日 07:08
【ソース】時事通信

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山上容疑者の母 安倍元首相の国葬儀後にも会見を検討 旧統一教会への信仰心は変わらず


山上容疑者の母 安倍元首相の国葬儀後にも会見を検討 旧統一教会への信仰心は変わらず
安倍晋三元首相の銃撃事件から1カ月ほど経ったころ、「山上徹也容疑者の母親が記者会見を開くらしい」との情報が駆けめぐった。しかしその後、話はうやむやに。母親は一時、親類宅に身を寄せていたようだが、現在は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係者に保護されており、いずれ何かしらの発表をする予定という。現在はどんな心境で過ごしているのだろうか。

事件直後から山上容疑者の母親(Aさん)を、大阪府内の自宅でかくまっていたという山上容疑者の伯父がこう話す。

「事件後すぐに、タクシーに乗って大阪まで来いと呼んだのです。それから1カ月ほどはずっと、うちの2階にいました。その間、奈良地検の事情聴取に2回応じた程度です」

Aさんの旧統一教会に対する思いについては、

「旧統一教会への信仰は解けていません。うちの2階でも旧統一教会の本を読み、奈良地検にも『教会に申し訳ない』と話したらしく、どこに謝罪しているんだ、と思いました」。

【日時】2022年08月25日 13:10
【ソース】AERA dot.

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山上容疑者の求刑・判決は「無期懲役」が有力か 「安倍元総理が被害者であることは影響しない」


山上容疑者の求刑・判決は「無期懲役」が有力か 「安倍元総理が被害者であることは影響しない」
親が熱心な信者という「宗教2世」の苦悩を手製の薬きょうに込めた山上徹也容疑者(41)。奈良地検は鑑定留置を行うことを決めた。世間ではその境遇に同情論や“神”扱いする声まであるが、果たして、求刑・判決はどうなるのか。

「逮捕されて3週間、これまで再三にわたって山上宅の家宅捜索が行われています。24日にも所有品の押収がありました」

と、社会部デスク。

「逮捕当初から捜査は本人の供述頼みの面があり、供述を裏付けるためにその都度捜索が行われているのです。24日には家から衣服とレシートを押収。衣服は自宅で火薬を乾かす際に身に着けていたもので、レシートは銃の材料を購入した際のものだと思われます」

25日午前、山上の身柄は勾留されていた奈良西署から大阪拘置所へ移送された。奈良地裁により、鑑定留置が認められ、11月29日まで、精神鑑定が行われることになる。

■「念のため精神鑑定」
「だいぶ調べが進んだ後の精神鑑定なので、検察としても裁判を見据えて、念のため精神鑑定をしておくということでしょう」

と、言うのは元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏。

「裁判になって被告人の弁護士から責任能力に問題があると主張されたときへの備えだと思います。見るからに責任能力がない場合は供述が固まる前に鑑定を行うはずですから」

そもそも「責任能力」とは何か。若狭氏によれば、二つの能力があるという。

「一つは物事が善いか悪いかを判断する能力。二つ目は、その判断に基づいて犯罪を行わないよう自分を律することができるか、というもの。神からのお告げや幻覚・幻聴のために自分の行動..

【日時】2022年08月04日 05:56
【ソース】デイリー新潮

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代替テキスト
(写真:共同通信

安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件が発生して、間もなく1カ月が経とうとしている。捜査が進められるなか、山上徹也容疑者(41)の“減刑”を求める署名が7月15日ネット上で始動。8月1日時点で4000人を突破し、その動向に注目が集まっている。

この署名活動は、署名サイト「Change.org」上で検察長官宛に開始されたもの。同サイトでは山上容疑者の減刑を求める理由として、《過酷な生育歴》《本人が非常に真面目、努力家であり、更生の余地のある人間である事》を挙げている。

「山上容疑者は幼少期に父親を亡くしています。母親は’90年代に旧統一教会世界平和統一家庭連合)に入信し、多額の献金をした末に’02年に自己破産。山上容疑者は奈良県有数の進学校に通っていましたが、家庭の経済破綻によって大学進学を断念しました。高校卒業後は海上自衛隊に入隊しましたが、わずか3年で退職。それ以降は、派遣社員アルバイトとして職を転々としてきたそうです」(全国紙記者)

同サイトには、こうした生い立ちの山上容疑者を同情する声が寄せられている。

《彼には恨みだけの人生を歩んで欲しくない》
《山上徹也の人生は、かわいそうだったと思う。人生やり直して欲しいと思う。もう一度チャンスをあげたい》

山上容疑者を擁護する動きは署名活動だけにとどまらず、他方面でも“持ち上げる”風潮が生まれているという。

ネット上では一部の人たちの間で、山上容疑者の容姿を“塩顔イケメン”と褒めそやす声も上がっているのです。そして、山上容疑者の生い立ちに思いを馳せ、“家庭環境に問題がなければ今ごろ幸せな生活を送ることができたのかも”と哀れんでしまうそうです」(ITジャーナリスト

さらに国を越えた中国では、山上容疑者が“フィギュア化”されたというのだ。

「犯行当時の山上容疑者を模したもので、半袖シャツに肩からカバンを斜めにかけ、手製銃を持つ姿が再現されました。事件直後に中国のネット上で販売されたそうですが、中国だけでなく日本からも“不謹慎”と炎上する事態に。制作会社はフィギュアを販売中止し、《国際的な問題になってしまい、悪影響を与えたこと深くお詫びを申し上げます》と謝罪文を発表しました。中国ではフィギュア化だけにとどまらず、犯行当時の山上容疑者のコスプレをする人まで出現したそうです」(前出・ITジャーナリスト

山上容疑者の刑事責任能力を調べるための鑑定留置は、7月25日に始まったばかり。報道によると鑑定は11月29日まで続き、奈良地検は鑑定結果を踏まえて起訴するかどうかを判断するという。

「山上容疑者を擁護する人たちのなかには、彼と同じように“近親者が宗教に傾倒したことで苦労した”という声が散見されます。他にも、“山上容疑者が事件を起こしたことで政治家と旧統一教会の癒着が露見した”と肯定する意見もあります。

しかし、山上容疑者が安倍元首相を殺害したことは事実ですし、許されることではありません。奈良地検は慎重に刑事手続きを進めています。ましてや求刑すらされていない段階で、“減刑”を求めるのは性急と言えるでしょう。また、政治家と旧統一教会の問題も、冷静に追及されるべきだと思います」(前出・全国紙記者)

山上容疑者を“持ち上げる”風潮に、ネット上では「待った」と制止する声が上がっている。

《事件の背景には同情する面もあります けど、求刑すらされていない段階での減刑の署名って…。確かに容疑者は被害者だった人物かも知れないけど殺人という事実の刑罰は本人がどう受け取るかであって今、擁護するべきではないと思う》
《「テロ」実行犯を英雄視するのは同意できないな。たとえ“宗教二世”で恵まれない境遇だとしても、罪は罪。模倣犯を出さないためにも情緒に流されてはダメ》



(出典 news.nicovideo.jp)


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